2005年09月30日

■《めばえ》6月の組曲・君の傘が人ごみに消えてゆく

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)

   
――制御システム課の《須藤》の家で焼肉ぱーちーをやる。

肉班の僕らは、二人でダイエーの食品売り場に入っていって。それから
しばらくして、買物カゴ を持った《亜美ちゃん》が、となりで、嬉し
そうに僕を見上げる。

楽しいね。新婚さんに見えちゃったりして。なんかいいなー(笑)

 ★★★

精肉コーナーで、ラム肉を二人で選びながら《亜美ちゃん》が言うのさ。

  いい男っていうのはね。うーん……アタシの基準で言うと、見た目
  でも、性格でも、器量でも、センスのよさでも、頭のよさでも、何
  でもなくて。アタシはさ。いい男っていうのは《女をキレイにする
  男》のことだと思う。


『………………僕は、女の子をキレイになんかしないよ』

《亜美ちゃん》は、じっーと僕の目を覗きこんで、黒目がちな瞳が、イ
タズラっぽく笑って言うんだ。

――どうかな(笑)?

                            ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

■《めばえ》ワンカップ大関で神様が笑って僕ら

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
 
 
――すごく早い時期に、性行為を経験しなかった?

土曜日。俺がカレーの匂いを気にしながら一日過ごした日だ。屋上は僕
らの場所で、黙ってても居心地がいい関係っていいなぁ。と思いながら、
タバコの煙を空に吐き出す。《亜美ちゃん》が隣りで本を読んでいる。
俺が《mirada》からもらった「萩原朔太郎詩集」だ。

僕らはそんな風に、気が向くまでしゃべらない。ただ居る。

「え?」『そうゆう雰囲気あるよ』「何が?」『早熟だったでしょ?

  ★★★

長い会話をした後は、いつも落ち着かなくて。緊張が解けない。うまく
話そうとするほど、うまく話せなくて。上手にやろうとすると何もかも
上手にできない。「ものごとにこだわらないって昨日君はいったよ」、
《固執しない》《執着しない》って。神様が久々に隣りで言う。

――何一つ、惜しまないこと。全部人にあげちゃえばいいんだ

神様が「ワンカップ大関」を飲みながら笑う。真夜中に。ぼくら。

                      ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記
 

2005年09月28日

■《めばえ》女の子の部屋には一人で上がらないルール

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
   

「もし、例えば、今、仲のよい人から同時に、電話がかかってきて、
  来てって言われたら、どうするの?20人ぐらい。」


亜美ちゃん。僕はこれまで色んな人との関係を「穴埋め問題」のように
眺めてきたんだ。たとえ僕がダメなら、その人は誰か他の人に頼むだろ
う。そんな様子をどうしようもならないことだと理解してきた。

『それがきっと人間のしたたかさや強さだと思う。だけど、僕はそんな
 ことがらを、どうしても許せずに、ずっと長い間過ごしてきた』

でも高幡にはいくよ。亜美ちゃんが、僕を頼るときは、嘘偽りなく僕に
しかできないことだろうし。

「もし、お風呂掃除をいいつかってたら?」
『ごめん。そんときはすこし遅れると思う』

《亜美ちゃん》は楽しそうに笑って、僕の鼻をきゅっと軽くつねる。

――アタシ、イノウエ君のそういうとこ、大好き。

★★★

それから僕は高幡のマンションの前に車を止め彼女をおろした。『家で
ちょっと休んでけばいいのに』という言葉を遮る。「女の子の部屋には
一人で、上がらない決りなんだ。自分で勝手に作った決りだけど。

《亜美ちゃん》は笑って手を振って。そして僕らの休日は終わった。


                      ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月27日

■《めばえ》 朝から軽く頭痛がしたヴァージンキラー

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)

   

――イロちん。もう、ちょっとやばいっス。

土曜出なので、てきとうに仕事をさぼりつつ『東京事変』のDVDを見
ながら《林檎》と一緒に「群青日和」を歌ってると《由美》が泣きそう
な顔でやってくる。

『何だよ』「新しく入ったマシン入。原点に戻らないんだけど。」
『《技術》呼べよ。高林さん、今日、出だろ?』「えー。イロちんがい
い」『………俺、カッコいい?』「かっくぃぃ!かっくぃぃーっ!今、
アタシが抱かれたい男NO1だから
」『ほんと?』「マジでマジで」

多品種Bは新機種で、昨日、初期流動が終わったばかりなのだ。俺は、
クランプの位置とセンサーをチェックしはじめる。手応えあり。

『いけそうだな……』「いっちゃって!いっちゃって!イロっちのフィ
ンガーテクで、もう、ダラダラいかしちゃっていいから!潮、吹かしち
ゃって!!流石ぁ。きゃぁぁぁ!このヴァージンキラー!

どうしてこいつはこんなにバカなのだろう。と思いながら、直した。

                      ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

《翼を捨てたい猫の物語'05》たとえ真夏の真ん中に立ちすくんだとしても

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――さようなら。またあう日まで

いつしか翼のある猫は、笑いながらそう言えるようになっていました。
いくつもの辛い別れを、身を切るような悲しみを、たくさん。それこそ
たくさん経験して。そう言えるようになりました。笑いながら。

さようなら。またあう日まで

出会いは、いつも別れを含んでいて、それはどんなものにしろ本当は、
とても苦しいものだけど、きっと泣いてはいけないような気がするよ
うになったのです。むしろ――。

 ★★★

そんな別れをしないためにも。ひとつひとつの出会いを一緒に過ごせる
一瞬を大事にするんじゃないだろうか?
そう思うようになりました。

バナナフィッシュ岬へ向うバスは、どこまでも海に沿って走ってゆきま
す。悲しも喜びも、みなこぼすことなくのせて走るこのバスは、永遠に
夏の夢を写しつづけます。波は穏やかかで黒潮はどこまでも澄み、古い
遺跡のようなテトラポットを、波が洗っているのです。

そうして一つの出会いは、無数の出会いを広げて行くのです。

――君がこれから手にするのは夢なんかじゃないよ

ロシアンブルー種の店長が言いました。それは可能性そのもので、息が
詰まるぐらいの希望そのものなんだ。ゲップがでるくらいね


                     ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
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2005年09月26日

■《めばえ》親しさを冷たさで表す人と言われて

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
   


《亜美ちゃん》は、俺が渡した「矢じり」を不思議そうに眺めていた。
「弥生時代のものだよ。魏志倭人伝。」それから、僕らは、すこし開け
た日溜りに座って、昼ご飯を食べた。

何かさ。親しくなるほど、突き放されるような印象を感じる

「え?俺?」『うん』「そうかな」『うん。結局………全部拒絶して誰
も受け入れていないんだね』「………。」

『でもアタシは………』

 ★★★

そこから《亜美ちゃん》は黙ってしまった。一生懸命言葉を捜しているの
だけど、どれも違う。そんな感じだった。

「帰ろっか?北野街道、きっと混むと思うんだ。」僕が言った。

僕らはきっと何も残さない。時代の《付箋》のようなものを残すことはし
ないだろう。だけど僕はこの時代を、ふたりですごした季節を、一つの時
代を、君の口ぐぜや、声とか、横顔とか、話してくれたことを、たぶんず
っと忘れないで生きていくと思う。
――そんな気がした。


                         ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月25日

《翼を捨てたい猫の物語'05》バナナフィッシュ岬・見聞録

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――たぶんきっと誰もが、本当に自分以外の者を理解することなんてで
  きないんだ。

夏の汗ばんだ思いでは少し切なく、夏草は思い出のように流れすぎては
消えてゆきます。たとえ帰る場所がなくても、僕らは一箇所にとどまる
ことを許されなくて。そして気がつけばやはり泣いてばかりいて、そん
な風に泣きながら、たくさんの大事なものを、大好きだったものと、決
別してゆくのでしょう。

 ★★★

きっと生まれた意味などなくて、それはたぶん自分で作るもので。

 ★★★

たとえこの季節が遠い過去のものになってしまっても。僕は君と過ごし
た輝いた一瞬一瞬を絶対に忘れはしないだろう。君は……―2月の兎は、
翼のある猫の肩に頭を寄せて、小さな寝息をたてています。

『――ねえ………今よりずっとずっと遠いところへいきたいわ。』

アルバイトを辞める時、ロシアンブルー種の店長がいいました。

強くなりなさい。タフに。打たれ強く。嫉み、嫉妬、ひがみ、やっかみ
冷笑、軽蔑、そんなあらゆる悪意から、ひとつでも多く、君が大事にし
ているものや、大切に思っている誰かをしっかりと守れるように。


そして誰もが誰かを本当に理解できないとしても、大きく包みこむよう
なそんな気持ちをしっかりと抱きしめて。


                           ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
 
posted by イロ室長 at 01:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜カメD翼ヲ捨テタイ猫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月24日

■《めばえ》泣きながらちぎった写真を手のひらに繋げてみるの

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
   

――このあいだの休みに《土器》を拾いにいった。

最近の屋上の友《亜美ちゃん》もいきたいというので高幡までいって
拾ってくる。そして車中の二人。

『え?なんかおかしい?』「ほんとは無口なんだよね。」『………。』
「何か嬉しいな♪」『………』「青だよ。」『あ………。』

『……何でそんなに楽しそうなん?』「だって楽しいもん」『ふつーの
女の子は土器なんて拾いにいかないよ
』「えぇー。アタシをふつーの女
の子だと思ってたんだ?」『………』「赤だよ」『あ…とと……』

「ほうじ茶のむ?」『………遠足気分?』「もちろん」

《亜美ちゃん》は、魔法瓶からお茶を注いで、僕に渡してくれる。懐か
しい匂いがした。色あせたアルバムの写真のような、青と赤と白のビニ
ールシートの思いでのような。

  ★★★

強い性欲が沸き起こるのを感じる。「抱きたい」と思う。体を預けてく
るその、リアルな重みを想像する。ひどく現実味のある『質感を伴う重
』だ。背中に手を回し、その前髪をそっとかきあげて。信号が青に変
わる。唇に手を触れる。彼女は目を閉じる。僕はレーンを追い越し車線
に変えて、トラックを追いぬく。ふぅ――――とため息をついて、我に
返る。いかん。いかん。どう かしてる。

『(北島)さぶちゃん家って、会社の近くにあるらしいよ。』

俺は、どうでもいい話題を切り出す。妄想よ早く消えてくれ。


                         ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月23日

■《めばえ》本当にひとりぼっちの人間なんていないのだ

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
 


――あの子に冷たいこと言っちゃったな。

せっかく冗談を言ってきたのに。しゅんとした顔で、おどおどして、帰
っていった。ほんとうは、ひどく子どもっぽくて、やさしい子だって知
ってるのに。

 《言葉がいけないんだ。言葉がすべてをダメにしちまうんだ》

一日一日を大切に生きること。言葉に頼らないこと。言葉を信じないこ
と。相手の気持ちを感じること。一番いい状態の自分を忘れないこと。
考え過ぎないこと。もっとたくさんの人と話すこと。言葉にすることを
恐れないこと。


  ★★★

そんな《青春ノイローゼ》な決意を呟きながら、玄関をあけると、花が
置いてあった。夕飯の用意をしていた《しぃ》の声が聞こえる。

『美容院からもらってきたんだよ』

――本当に、ひとりぼっちの人間なんていないのだ


                         ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

■《めばえ》馬小屋を火事にしたのはセーラに決ってるわ!

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
 


――食パンあるでしょ!何で買ってくるの!まったく………!

俺は、服を汚して帰ってきた子どものように、うつむいて、右腿の後あ
たりを掻いていた
。そう、唇をかみしめながら。でも………。

……うるせぇ……白豚……」『何ぃ!』「いえ、あ、すんません。あ
 の、これ、あの、あ!洗い物、僕やります」

 ★★★

――アセトン(非常に臭い液体)がなくなったのでD号館に取りにいく。

と、《由美ぶ》が「イロちん、どこ行くの?」声をかけてくる。『D号
館にアセトンもらいに行くんだよ』「ちょっと、D号館行くときは、声
をかけてっていったじゃん。アタシも三課に用事があるからさ。D号館
いくときは一緒》って朝いったでしょ?」『あぁ』 と俺たちは玄関へ。

「まったくD号館《いくときは一緒》っていってたのに。《いくときは
一緒
》っていったよね?」『うん。』「まったく水臭い。《いくときは
一緒
》って約束してたのに。《いくときは一緒》でしょ?」………。

うるせぇ!てめぇ、ぶっ殺すぞ!

バカなのだ。こいつは、どうしようもなく昼間からバカなのだ。


                         ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月21日

■《めばえ》アイツもだんだん所帯じみてくるなぁ………

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)



――風呂と、洗面台と、トイレ掃除しとくこと。《し》

昨日、朝起きると、そんな《メモ書き》がテーブルの上においてある。
ふん。『何ふざけたこと言ってんだ?』俺はメモをさっくり取ると、
キッチンのゴミ箱に捨てた。アイツもだんだん所帯じみてくるなぁ…
……。

それから、ゴム手袋をとりだして、忘れないうちに、午前中のうちに、
終わらせておこうと、バスマジックリンを洗面台の下からとりだす。

――どうして、女っつーのは、風呂場にやたら色んなモノをおくのだろ
  う。


何がなんだかさっぱりわからない瓶とかチューブの類を磨きながら、俺
は昔のガールフレンドたちの風呂場を思い出す。みんなそうだった。俺
なんか、ビオレとシャンプーリンスで十分なのに。

  ★★★

多摩川の土手でタバコを吸う。図書館で午後を過ごす。今日を生きるこ
と で、昨日を忘れてしまう。それを恐れてはいけない。できないと言
う前 にやる。今から、僕は何にでもなれる。どれでも選べる。風が気持
ちい い。そして見上げる空は、高く―高く―高く――。


                         ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月20日

■《めばえ》助手席の彼女をそっと「ついたよ」と揺り起こした

 
§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)


――一体、イノウエさんは何がやりたいの?

詰め寄られても答えに困る。 女の子のことを考える。車に乗っている。
どこかに行った帰りだ。勝沼に「ぶどう狩り」に行ったのかもしれない
し、苗場に「スノボー」に行ったのかもしれない。

とりあえず、彼女は疲れて寝ていて。車がカーブするごとに、彼女の前
髪がすこし傾く。寝息は規則正しくて、そのたびに、薄でのブラウスを
羽織った胸が小さく上下する。とても、ぐっすり寝ているのだ。


やがて大きなカーブにさしかかったとき、彼女は僕の肩に頭をもたせか
ける。それでも起きることはない。そのまま僕は運転を続ける。たまに
坂道にさしかかったとき、彼女を起さないように注意しながら、左手で
そっとギアを3速にいれる。

よりかかる彼女の重みは、ひどく遠く懐かしい重みで。とても大切な何
かを思い出させてくれる
。そんな心地よい重み――。

★★★

それがやりたくて教習所に通っていた。と言うと、そうゆうことじゃな
いです、と否定される。車で寝ると口が開いちゃうからお前も注意しな。
男ってそうゆうの引くから。と《まゆこ》『余計なお世話です!』……。

                         ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記
 
 

2005年09月19日

■《めばえ》空っぽの下駄箱に君のネームプレートだけ残ってて


§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)


――海の匂いがするね。

屋上で俺が一人、ノイローゼな妄想にひたってると《亜美ちゃん》が
来てそう言った。俺は無視した。最近誰ともしゃべりたくないのだ。
海の匂いなんかしないよ』俺が言う。一番近い茅ヶ崎までどれぐら
いあると思ってんの?

カモメも飛んで来るんだよ」『ウソだよ』俺はつまらなそうに言う。
じゃ、本とだったら下でジュースおごってね。」『いいよ。

――ほら。と《亜美ちゃん》が指差した先に、カモメが飛んでいた。

おだやかに時間が流れていきます。僕は目の前にいるこの子が、この
子の信頼しきって見上げるその瞳が、悲しくて切なくてしょうがなく
なるのです。


★★★

たくさんのことを考えました。たくさんのことを考えて、君のネーム
プレートだけが残る、空っぽの下駄箱がどうしても目に入ってしまう
ので、また屋上に行って泣いて来ました。仕事なんてまともにできま
せんよ。今頃、小嶋がまた僕を探しているでしょう。

なんかね。とても大事な出会いのような気がしたの。

君が残した言葉――。

                         ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月18日

■《めばえ》そしていつか眩しげに、この季節を眺めるんだ


§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)


――最近、誰ともしゃべりたくない。

ので、昼は屋上で一人でパンを食べて、食べたら歌を歌って過ごしいる。
まぐろの王様、町へゆく」は俺が作った中でも、ベスト3に入る名曲
だ。《亜美ちゃん》が「探したよ」と、隣りに座って。それから、しば
らくふたりとも黙っていた。僕は雨が降りそうな6月の雲を仰いだ。
今日、八王子の天気予報は、くもりのち雨――。

『なんかね』「――え?」

『イノウエ君を見てると、いっしょうけんめい生きてるなぁって思
 うのよ。いっしょうけんめい元気で、いっしょうけんめいはしゃい
 で、いっしょうけんめい凹んで、いっしょうけんめいやさしくて、
 いっしょうけんめいムキになってて、いつも、いっしょうけんめ
 い誰かのことを考えているの。』


――いつもアタシはイノウエ君みたいになれたらなぁって思うんよ。

 ★★★

家で――。《しぃ》と「食わず嫌い」を見ながら、卵かけごはんに
しようと思い、卵をがつんとやるとどうも割れない。あ?あ?あれ?
「ゆで卵」だったわけで。「ちょっと!明日のアタシのお弁当のお
かず!!」と本気で叩かれる。

僕は今日もいっしょうけんめい生きている。


                           ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月17日

■《めばえ》朝起きて「おはよう」と言える幸せとか


§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
 


――君は、人に好かれるか好かれないか、ということで生きてるのではな
  かったはずだよ。

そうだろ?となりで神様がショートホープをふかしながら言った。屋上で、
仕事をさぼって、俺がぼんやりしていたとき。神様はいつも突然現れる。
夏の日の夕立のように。

激しく美しく生きたい』君はそうとも言っていた。『いつも何かに夢中
に なっているような、そんな人になりたい』とも言っていたよ。『輝く
激しさ
』 に惹かれるって。

――「怖いんだ。」正直に僕は答える。

『みんなをつき放してしまうから?』神様は空に向って、かったるそうに
煙 を吐き出した。『高く飛ぶことだけを信じるんだ。』そして、高く飛
ぶには ………下を見ちゃだめさ。

★★★

分かり合うことが《愛》ならば「愛」のない僕は、きっと誰のことも分っ
て いないのだろう。分かり合うことが《愛》ならば、分かり合えていな
いとい うことはとても《不幸》なことなのだろう。分かり合おうとして
いるのに、 分かり合えないということはもっと《悲惨》なことなのだろ
う。でも、そん なに簡単に《愛》なんて口にできるわけないじゃないか。


「悲しみを背負った分だけ」強くなれる。最後まで逃げないこと。


                            ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月12日

■《めばえ》男っぽい大きな字を書く女の子に会いにゆく

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
 


――どうしても、その女に会わなければならなかった。

GWのある朝、僕は自分で焼いた「アジのひらき」を食べながら、もう
一度「やっぱり彼女に会わなければならない」と呟いた。朝のワイドシ
ョーでは《尼崎脱線事故》の現場に立ったレポーターが、ずっと解説を
続けていて《清原の500号》について新聞ではコラムを立てていた。

――鏡を見ながら、歯を丁寧に磨いた。

最近、家人が僕の歯についたタバコのヤニや、茶渋(僕は四六時中茶ば
っかり飲んでいる)についてうるさく言うのだ。

 ★★★

ブラッシングの角度を確認しながら、会わなければならない彼女のこと
を意識的に思い出そうとした。言葉を用意していかなければならない。

机に向うとわずかに揺れる髪と、桝目を無視する大きな字と、子供っぽ
い黒目がちな瞳と「COACH」のバッグ。笑うと、えくぼができる。タバコ
は吸わない。三ヶ月前までシステム課の人と付き合っていた。どうして
こんなやっかいごと引き受けちまったんだろう
。呟く。

――しんどい一日になりそうだね。鏡の中の僕が苦笑する。

 ★★★

だからお盆には帰っからよぉ、田んぼだべ?」 実家からの電話で。
 

                             ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

 

■《めばえ》日曜の午後に彼女が来て一緒にアルバムをみるような時間

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
 

  アタシのことはいつか忘れてしまっても別にいい。
  アタシわかってるから……それはしょうがないから………。
  でも、今日見たこの海だけは、忘れないでいてお願い――。


そう言って彼女は、しばらくの時間、こどものように咽びながら泣いて
いた。Tシャツの生地を通して、涙のぬくもりを感じた。ぬくもり?
涙は温かかった。そう言えばそんな気がした。そしてその「ぬくもり」
は、ずっと昔に忘れてきた何かを思い出させた。

それは日曜日の午後を思い起こさせた。ガールフレンドが家にあそびに
きて、親が何か昼をとってくれて、部屋で中学校のアルバムをみている
ような、そんな(ありふれていてとどかない)時間の「におい」だった。

  あの日の海の色を僕はまだ忘れないでいる。

  ★★★

書籍版『困ったときのベタ辞典』におおかたけりつき、うちあげをやろ
うということになり。うちあげをやる。

湯島で祈願したいということで、2時にまちあわせしたのだが、いっこ
うに落ち合うことができない。俺は「湯島聖堂」にいた。人気のないこ
とをいいことに、縁側?にだら〜と横になって「きもちいいなぁ」と、
木のはっぱを見上げていた。こういう時間って好きだ。

結局、待ち合わせは「湯島天神」だったわけで。

  ★★★

世界中のインコの名前をピーコに変えてしまえ団

で、何かやらなくては、このまま先細りだ。ということになり、「まっ
たり」をモットーに《貝殻ひろいin湘南》をやることに決定する。現地
集合、最後はそれぞれの場所に、さわやかに旅立つこと。が会の掟。


                           ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月11日

《翼を捨てたい猫の物語'05》いくら耳を澄ましても聞こえない声がある

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――いくら耳をすましても、聞こえない声がある。

《喜八》の手紙はこう締めくくられていました。翼のある猫はすこし貯
金もできて、ようやく落ち着いた頃でした。生きているだけでお金がか
かります。そして《喜八》は、また悩んでいました。

決して諦めているわけでもないんだ。投げ出しているわけでも、諦観し
ているわけでも、冷めているわけでもない。ね。わかるだろ?何かやり
たいんだ。無性に駆け出したいんだ。でもどこにいっていいのか?何を
やっていいのか全く分からない。そういう辛さってわかるかい?


 ★★★

翼のある猫は、家を出た猫です。自分でやらなければ、誰も何もしてく
れない
ことは、慣れるまではしんどいことでしたが、そこには何モノに
も変え難い自由と、充実感がありました。辛い別れを繰り返すたびに、
泣いて。次の出会いを大切にしようと心に誓い、そしてその分、言葉に
できない何かを大事に背負ってきました。
その一つ一つが、家にいては
学校にいては得られないもので、自分が一番求めているものでした。

 ★★★

フロアを任された翼のある猫は、アルバイトのシフト表を作りながら、
ぼんやり考えていました。

――喜八。『割に合うか割に合わないか』考えてるうちは、一歩も前に
  進めないんだよ。


                           ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
posted by イロ室長 at 13:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜カメD翼ヲ捨テタイ猫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

■《めばえ》始業式、ポニーテールの君はパラゾールの匂いがしたね

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)

 

――今の僕を見て君は 遠い目で笑うかい?

  ★★★

昔、都内に出ると頭痛がした。それぐらい都会の喧騒は、田舎っぺの俺
にとってセンセーショナルだったのだ。《特急スーパーひたち》が上野
近くになると、何故か「ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた」の音楽が
流れるのだが(詳細不明)、その曲を聴くと、どきどきしたものである。

何が不思議かと言うと、電車の高架線から見る街並みが、地平線まで続
いているのである。――ありえない。人が地平線まで埋め尽くされてい
るのだ
。――ありえねえだろう。俺は、東京という街の空恐ろしさを感
じ、財布だけはしっかり内ポケット、と確認したものだ。

  ★★★

――そうか!走ればいいんだ。

俺は名案を思いついた。何もジムにかよってルームランナーしたり、朝
高尾山を坂ダッシュしなくても、外に出たら色んな場面で駆け足すれば
いいのだ
。大日本帝国海軍方式だ。

というわけで、車から降りたらビデオ屋までダッシュ、ヨーカドーを出
たら、車まで全力ダッシュしてたら、《しぃ》に本気で「やめてくれ」
と言われた。涙目にすらなっていた、いわく、

「トムハンクスみたいだ」と。

うるせ。白ブタ。とシカトして続けてたら「やめろ、つってんだろ!!」
と思いっきり尻を蹴られる。痛い


                           ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

2005年09月06日

■《めばえ》 イロ君、今日は泊まっていったらどうだ?

§この物語は《青春ノイローゼ》と戦いながら、愛を捜し続けた一人の
  男の記録である。(「アコナイト旬報」より)
 



――両家公認★学生カップルである。

そうゆうのにはずかしさを感じるほうなので、滅多に実家へ女の子を上
がらせなかったし、その正体をさらさせなかった。(多分、女の子は不
安に思ったと思う)。

そういうわけで、なるべく相手の家にもよりつかなかった

よく、相手の親に気に入られて、一緒に遊んだりしてるなんて聞くと、
すごいなぁと思ったものである。相手のお父さんに、どうだ?学校(仕
事)のほうは?とか、いいから泊まっていきなさい
、なんて言われたら、
パニックになってしまっただろう。

  ★★★

――5月のある日曜日、僕は、はじめて彼女を連れて実家に帰った。

家の前に車を止めて「ちょっとまってて。」と彼女に言って、実家の汚
い玄関の戸を空け、来訪を告げた。家の居間の『観光提灯』は増えてい
て、俺の部屋のドアノブには『プーさん』がぶらさがっていた。母の仕
業だ。バカ猫は俺を忘れたらしく、ひたすらフーッ!!と威嚇していた。

そうして、彼女を呼びに車に戻った時。彼女はインターで買ったお土産
を手に、気取ってつっ立っていた。

何すましてんだよ。バカじゃねえの。』

俺は笑った。5月だった。風も、日差しも、匂いもすべて心地よかった。
眩しい季節――5月の晴れた日曜日には、時々そんなことを思い出す。



                           ■《めばえ》〜ぼくのせいちょう日記

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