今年、当番だった僕の家には、親戚や近所の人が集まり、大人たちは開け放った居間で、おおいに
酔っ払ってる。母親は刺身を切っている。台所と
居間をせわしく往復し、忙しそうだ。
友達でも他人でもない、「いとこ」という不思議な親近感で結ばれてい
る僕らは、大人にかまわれるのが嫌で、隣の部屋に固まって、《だらだ
ら》としている。普段見向きもしないトランプが楽しくてしょうがない。
もしも「いとこたちと過ごす正しい夏休み大会」があれば、僕はきっと
入賞したにちがいない。
夏休みの終わりに、またそれぞれの場所に戻ってゆく最後の夜に。
僕らは近所の酒屋に花火を買いにゆく。
たくさんの長い影を従えて、バス停に向かう細い路地は、まるで
サーカスのパレードみたいさ。
『……花火やろうよ』
唯一同じ学年の《サキ》ちゃんが、縁側にすわってぼんやりしている。
「いいよ。こっちで見てるだけでも楽しいから。…ねぇ。」
『え?』
「アタシと、夜の海に行ったこと《あや姉》にも言っちゃダメだよ」
『うん。』「……」『……』
この夏、僕らは時々、こっそり家を抜け出して、夜の港でカップルのセッ
クスを覗いたりしていた。もちろん、いつも《サキ》ちゃんが誘うのだ。
「…アタシもいつかああゆうことするのかな?」『…しらないよ。ねぇ』
「え?」『東京って楽しい?』「少なくとも楽しくはない。アンタが思うほどは」
★★★
僕らは次の夏もまた会うことを約束せず、血のつながりはまたそれぞれの
場所に散っていった。学校が始まって気づいたことは、大好きだったクラ
スの女の子が急に好きでも何でもなくなったことで。僕は、サキちゃんが、
言うことを聞くと見せてくれる《パンツ》の思い出にばかり、しばらく浸
って9月を過ごした。
僕らは、次の夏休みに会うことを、約束しないで別れた。
■『悪者の一人もいないホームルーム』より一部抜粋
−IRO& CHEMICAL CORPORASHIONS


