2006年09月26日

《イロ自作選集2》僕らは次の夏休みに会うことを、約束しないで別れた

――お祭りの余韻が、家中に漂っていた。

tidori1.jpg 今年、当番だった僕の家には、親戚や近所の人が
集まり、大人たちは開け放った居間で、おおいに
酔っ払ってる。母親は刺身を切っている。台所と
居間をせわしく往復し、忙しそうだ。


友達でも他人でもない、「いとこ」という不思議な親近感で結ばれてい
る僕らは、大人にかまわれるのが嫌で、隣の部屋に固まって、《だらだ
ら》としている。普段見向きもしないトランプが楽しくてしょうがない。
もしも「いとこたちと過ごす正しい夏休み大会」があれば、僕はきっと
入賞したにちがいない。

   夏休みの終わりに、またそれぞれの場所に戻ってゆく最後の夜に。
   僕らは近所の酒屋に花火を買いにゆく。
   たくさんの長い影を従えて、バス停に向かう細い路地は、まるで
   サーカスのパレードみたいさ。


『……花火やろうよ』

唯一同じ学年の《サキ》ちゃんが、縁側にすわってぼんやりしている。

「いいよ。こっちで見てるだけでも楽しいから。…ねぇ。」
『え?』
「アタシと、夜の海に行ったこと《あや姉》にも言っちゃダメだよ」
『うん。』「……」『……』

この夏、僕らは時々、こっそり家を抜け出して、夜の港でカップルのセッ
クスを覗いたりしていた。もちろん、いつも《サキ》ちゃんが誘うのだ。

「…アタシもいつかああゆうことするのかな?」『…しらないよ。ねぇ』
「え?」『東京って楽しい?』「少なくとも楽しくはない。アンタが思うほどは」

 ★★★

僕らは次の夏もまた会うことを約束せず、血のつながりはまたそれぞれの
場所に散っていった。学校が始まって気づいたことは、大好きだったクラ
スの女の子が急に好きでも何でもなくなったことで。僕は、サキちゃんが、
言うことを聞くと見せてくれる《パンツ》の思い出にばかり、しばらく浸
って9月を過ごした。

僕らは、次の夏休みに会うことを、約束しないで別れた。


                     ■『悪者の一人もいないホームルーム』より一部抜粋
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2006年09月25日

《iro日記》俺は気まずくまったりしたいのだ。


――あーっ!トイレの人!

無論、俺のことだ。今日食堂でBランチの列にならんでいると、前でし
ゃべっていた女が俺を指差して大笑いする。

tidori1.jpg というのは………俺はいつも決った時間にオシッ
コをすることにしていて
、B1館の2Fトイレは
A館の通路と向かい合っており、やはり同じ時間
にA館廊下を通るたぶんシステム課の女と、目が
合い、なんかこう、なんて言うのかな、こう、ス
ローモーションで時間が流れるのだ。

もっと詳しく言うと、俺はオシッコをするときは目の前の窓を開けて、
空をながめることにしてて、それにより、何て言うのかな、こう空の青
さを抱きしめるっていうか、わかるかな?

 ★★★

例えば、旅行で小さな民宿なんか泊まると、風呂って家の風呂みたいな
のってあるじゃん。。それで、見知らぬおっさんと並んでその小さな浴
槽に、同じように膝を曲げて、だま―って入ってると、なんかね、なん
ともいえない複雑な気持ちになる。俺こんなところで何やってるんだろ
うって。(「気まずくまったりしたいのだ」イロ著 より)


 ★★★

アタシは、妻や奥さんになりたいんじゃなくて、お嫁さんになりたいん
だ。結婚するんじゃなくて、信じた男のところへ『嫁ぐ』の。 『嫁ぎた
い』んだよ。―《しぃ》がグリーンカレーを作りながら言う。


            ■鏡に向かって「真似すんじゃねぇ!」って言ってみたの
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2006年09月15日

《イロ日記》俺がネオンの街を飢えた狼のように彷徨っていた頃

――んんんんん。んんんんん。

tidori1.jpg 三課から来た、《まゆこ》は、可哀想に、小中と
まともな教育をうけてこなかったので
、気に入ら
ない奴が職場に入ってくるとタイムカードを隠し
たり、また、このように自分になびかない人が休
憩室に入ってくると、非常に大きな咳払いをして、
おいだそうといする。俺はもう、ただ哀れとしか
いいようがない気持ちでいっぱいになり、ガンガンっ!と机に自分の頭を打
ちつけ、歯をむき出し、指を鍵形にして威嚇する。と、そんな俺が怖くなっ
たのだろう。すぐ出て行った。……ふん。半端もんが。

――バカとキ○ガイに勝てると思ってんのか?

そうか。やっぱり俺が世直ししなければ……。そんな昨日の出来事を思い
出しながら、俺は鎌倉に向かう車中の人だった。鎌倉……そこには今の俺
の原点となるすべてが凝縮して詰まっている場所だ。飢えた狼のように、
刺激を求めながらネオンからネオンへ徘徊し続けたあの頃の俺
が、最後に
たどり着いたのが鎌倉の古刹『明珍寺』だった。

江ノ電を降り、「ぶらり下車」のように、それ、何作ってんですか?と、
明らかに、せんべいとわかるものをあえて尋ねてみたり「カメラさん、
入ってみますか?」と、とりあえず言ったりしながら、俺は明珍寺へ向か
う。妙元和尚が待っている。


あれ以来、確かに俺は変わったし、何か壁にぶつかるたびに、この寺に来
るようなった。いごごちがいいので時には数週間も長いしてしまう時もあ
るが、幸い和尚は人がいいので何も言わない。そして、和尚が、もうそろ
そろ帰れと言う頃、俺は答えを得ている。

――走る、振り向かず走る。後ろに答えはない。未来すらない。

山門で一礼して、俺は寺をおりる。八月十五日、幾度目かの終戦記念日に。



                           ■俺がネオンからネオンを飢えた狼のように彷徨っていた頃
 
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2006年09月14日

《イロ日記》好きな果物は「梨」で、好きな教科は「体育」です。

実家の梨を送ってくれといったら、そっちもなにか送れと言われた。

tidori1.jpg ………俺は軽く頭痛がした。そうゆうわけで、葡
萄を買いに勝沼にいく。キングオブ裏道の俺は、
大渋滞の中央道&20号を尻目に、1時間半ちょ
いで到着。ぶどうの丘で、巨砲いや巨峰アイスを
食べる。

 ★★★

田んぼを見るとほっとする。東京では田んぼをみる機会がほとんどない。

――田舎というものは『煙臭い』ものだ。

やたらゴミを燃やすし、この時期、早いトコでは野焼きをしている。とに
かくこの時期、煙臭いのが田舎だと思う。ドカンとスズメよけをぶっぱな
してるのも風情がある。(これがわかる人がいたら嬉しいなぁ)。

 ★★★

俺が送り先の住所を宅急便の紙に書いていると、店のおばちゃんが「あら
まあ、かわいい字ねー。」と笑う。《しぃ》も女みたいと言う。

どうかな。




                              ■ランチョンマットを選んだふたりの幸せな時代U
posted by イロ室長 at 23:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜はカメムシを探しにU | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月11日

《iro日記》ランチョンマットを選んだふたりの幸せな時代

――結局、自分っぽくしか生きられないのだ。

tidori1.jpg ねえ。窓を開ければ満月さ。横田基地へ、アジア
ン雑貨を見に行ったと きに見た。あのときと同
じような月が、飛行場に、枯れゆく夏草の向こう
に、浮かんで見えるさ。草原に浮かぶ月は不思議
だよね『文化祭の準備で帰るのがおそくなった夜
みたいだ』と言うと。「わかるわかる」って君が
笑って、夕暮れに。お店が並ぶ16号を歩いて。

 ★★★

夕方の風は涼しくて、草の匂いがするよ。

     月はあんなにも一人ぼっちなのに、明るく辺りを照らします。


 ★★★

いつか時代がかわって、わだかまりも、憤りも、すれちがいも、葛藤も
なくなって、自然な気持ちでお互いを思える時、またここで逢おうね。
と君が言って。あの時僕らは――。

どうしてあんなにも痛々しかったのだろう。あんなにも僕らは悲しかっ
たのだろう。どうして誰にも頼らずに、自然に消えていくのを、ふたり
とも黙って潔く受け入れてしまったのだろう。

――ねえ。窓を開ければ月が浮かんでいたよ。



                    ■ランチョンマットを選んだふたりの幸せな時代
posted by イロ室長 at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜はカメムシを探しにU | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月10日

《イロ日記》気になるあいつは縮毛矯正

tidori1.jpg どうして男は、職場に若い女の子が来ると、あれ
これ世話をやきたがるのだろう。『どう?もう仕
事に慣れた?
』男や妙齢の女性には、間違っても
見せない、やさしさである。そこいくと、俺なん
かは、まだ3割がた狼に育てられた頃の記憶が残
っているので、自分のテリトリーに見知らぬ奴が
入ってくると、歯をむき出して威嚇してしまう。そんな様子を見ていた
コードネームはF、暴れ乳《宝田》が、

――あんなのがカレシや旦那だったら自殺する。みっともねぇ。

と、つぶやき「ほんで、あんたはバカ」。と、歯をむき出していた俺に
さめた視線を投げかける。いいじゃないか。俺は、俺らしく、せいいっ
ぱい生きているのだ。生きている。それだけですばらしいじゃないか。
なんかしゃくに触ったので、腹いせに、隣で携帯で自分の写真をとり、
それをデスクトップの画面
にするというのを最近の日課にしていて、ど
う救いの目で見ても、明日死んだほうがいいだろうという《由美ぶ》
に、『お前のそういうところがヤラシイよなぁ』と、言い切る。と、
「…どういうとこよ?」と、マジ切れ寸前。

  タバコは? ――最近は『ハイライト』(前はセッター)
  その今読んでる本、何? ――『向田邦子』だけど。(俺、舌打ち)


そういうとこだよ!!そういうとこがやらしいんだよ!!!畜生。何で
よぉ。せーラムライト吸おうよぉ。江國香織とかさ、吉本ばななとか、
読もうよ。な。例えばな。ほら、宝田、最近読んだ本、ほら、言っちゃ
って。えぇー…アタシ、本なんて読まないよ。『ガラスの仮面』かなぁ。
《のっこ》から、まとめて全巻借りて。
いいじゃない。『ガラスの仮面』
いいんじゃないのぉ。じゃ、ちなみに好きな作家は?――うー…ん、赤川次郎?

宝田お前、最高だよ。その気取らない自然体が、素敵。素顔の君が好き。


                     ■気になるあいつは縮毛矯正
posted by イロ室長 at 00:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜はカメムシを探しにU | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月08日

《イロ日記》そんなあいつは縮毛矯正


――というわけで、客がこなくて暇なのである。

tidori1.jpg 利口なウサギは巣穴を3つ作っているものである。
もうこれだけで賢明な土曜カメファンにはイロが
何がいいたいのかわかるというものだろう。利口
なウサギは巣穴を三つもっているのである。ひと
つがダメでも、あとふたつ残っているのである。
グローバル化がすすみ、ユビキタス社会が、地上
波デジタルな現代、米軍再編のあおりをくらい、俺もスライド式に、他
業種をかけもちせざるをえなくなったのである。というわけで客がこな
くてひまなのだった。

暇なので、1Fの『スタバ』と『そごうのシュークリーム屋』までいっ
て、もろもろ買出ししてきて、食いながら、同僚の《かおりん》の不倫
談義を聞いてやっていると、客が来る。


『あぁ、島田さん。腰、どう?今日は鍼にする?』

施術しながら、ふと思い、PTAの件どうなりました?と聞く。それは、
実は、銀行引き落としの給食費を踏み倒す親が多くて学校も困っている
という話で、俺は「父兄のまわりもちにして、じかに家までいって集金
するようにすれば、いいんですよ」と前回アドバイスしたのだ。

――それがすごいのよ、イロ先生。回収率100%。

だろうな。俺は9月の空を見上げた。雲が高かった。



                       ■そんなあいつの縮毛矯正
posted by イロ室長 at 23:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜はカメムシを探しにU | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

《イロ日記》イロさんだったらきっとこう言うだろうと後輩が言った。


――イロさんがいなくなってから、一番変わったのは斉藤でした。

tidori1.jpg ほう。あの斉藤が……。俺は、タバコに火をつけ
た。後輩が遊びにきたのだ。俺がだした「ミネラ
ル麦茶」に手もつけず、後輩はうつむいたまま話
を続ける。



「山本たちが好き勝手にやりはじめて、どんどん…どんどん変えてった
んです。そのたびに『それはイロさんのやりかたじゃない』って真っ向
から反対したのは、あの、一番イロさんに噛み付いてた斉藤で……、そ
の斉藤が……『このままじゃイロさんと俺たちが作ってきたものが、全
部台無しになっちまうって』言って、クーデターを起こそうとしたんで
す。でも……でも……、イロさん、すいません。僕は、僕らは、主役に
も悪役にもなれない、いつもその他大勢で、卑怯者で……。」

それっきり黙った後輩を俺は、じっと見つめる。もうそれだけで十分、
だった。こいつらは、斉藤についていけなくなって、見捨てたのだろう。

「僕らは斉藤についていけなくなったんです。あの我の強さにうんざり
したんです。口ばっかりで、自分はなんにもしないで、批判ばっかりし
て、そんなあいつの態度に心底、嫌気がさしたんですよ。」


――いくら、斉藤の言うことが、正論で筋が通っていてもです。

そうなったらもうアウトですよ。そんな斉藤の言動を笑って許せるイロさ
んがいない今、斉藤は見せしめのように、切られました…………。
『切っちまったのか……斉藤を……、ひとりぼっちで、そんな非情なや
りかたで追い出したのか……』喉まででかかった言葉をのみこむ。俺は
黙ってうなづいた。それを言葉にするのは、こいつにも酷だと思った


斉藤が、最後の日、別れ際に言ったんですよ。イロさんだったら、こう笑
って、全部チャラにして、そんでお開きにするだろうなって。

『ま、斉藤だったらそんなとこだろ。じゃ、解散!明日10時集合な』


        

                        ■イロさんだったらきっとこう言うだろうと後輩が言った。
posted by イロ室長 at 00:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜はカメムシを探しにU | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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