――なあ、俺はみんなからまだバカと呼ばれているか?
俺は、自前のハルシオンが切れてくると、自己確
認せずに自我をたもてなくので、そうやって《桑
野》に聞いたのだった。それは、俺の中にあ『ロ
ックよ、静かに流れよ』的な、
男闘呼組のDNAの影響もあっただろう。
「話題にすらなってませんよ」どうしてみなそういうのだろう。俺は大衆というものの、無邪気な愚か
さをなげきつつ、『やんやんややー八木山のーベニーランドには、でっ
かい夢が…はずんでるんだよ!美酒、爛漫』と、南東北人にしかわから
ない形の激しい怒りを、一般市民である《桑野》にぶつけてしまった。
★★★
『おつかれさま。ねえ。満月がとってもきれい。
今、雲がその前を横切ってるよ。そこから見える?』真夜中のサービスエリアで、一人、ひとやすみ。トイレに行って、無料
のお茶を飲んで、寒さに震えながら車にもどってくる。疲れた。シート
を倒して携帯を開けたり閉じたり。前に《亜美ちゃん》から、もらった
メールを偶然開いて、さびしくなった。
ダメだよ。亜美ちゃん。君を幸せにできるのは俺じゃないんだよ。君は、
早く、誰かと出会い、普通に恋をし、家庭を築き、そんな幸福が溢れ出
るような日常の中で、笑ってるべきなんだ。
★★★
ねえ。お月さまは夜の空にひとりぼっちだね。
ひとりぼっちななのに、あんなにかがやいてるよ。冬。大晦日の夜。真夜中の自転車の後ろから、頬を僕の背中にそっとつ
けて、《シュウちゃん》が言った言葉を思い出した。それから――
――うちらは、ぜったいに太陽になれない、月の子どもなのよ。文化祭の準備がやっと終わった夜。冬の帰り道。東京から転校してきた
《オオツキさん》が言った言葉を思い出した。
■朝起きたら枕が涙でぬれていた