管理課の女が、うさんくさそうに俺を見て「え?」と言った。
――「だから“眼鏡手当て”申請したいんだけど。」
俺は早く用紙をよこせばりに手をカウンターに出していた。そう、ついさっき《由美ぶ》に『えー
っ?イロっち、眼鏡手当てもらってないの!?眼鏡
かけてる人は、一日千円付くんだよ。』と言い、
小嶋も『あれ、知らなかったんですか?月2万ぐら
いでるのに』というので、あわててD棟の管理部
までとりに来たのだ。
『ほら、眼鏡かけてる人は一日千円付くってやつなんだけど』
「いや、そういう手当てはないんですが……」
そこではじめて俺は気づいた。そして、もう二度とD棟付近を歩けな
いと思った。
★★★
あまりしゃべらないけど、だけど後で
たくさんのことを聞いたような気持ちになる、
イロっちってそんな人。アタシにとってそんな人だよ。
今日の思い出を言葉に残して。どうしようもならない痛みの中から、
何かを必死にとりだそうとしていて。身を焦がすような愛情すらと
どかない、そんなひどく穏やかで静寂な瞳に、君は手をかけている。
春の日差しの中、手のひらで、心地よさ気に弄んでいる。
■管理課の女が俺を胡散臭げに見ていた
−IRO& CHEMICAL CORPORASHIONS


