2006年01月08日

《翼を捨てたい猫の物語'05》 はじまりのおわりのはじまり

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涙も悲しみも寂しさも、喜びも嬉しさも、
 一片のわだかまりや名残すら残さず 

   やさしさを抱えて
     やさしさだけを抱えて今夜――、

 次々と夜空を飾る星座となってゆくのです


     《 翼を捨てたい猫の物語'05リミックス版 〜 index 〜 》

たとえ真夏の真ん中に立ちすくんだとしても ●バナナフィッシュ岬・見聞録
カマンベールかにかまを作りつつ思いました ●日記をつけない猫なのです
毎朝、上り列車を眩しそうに眺める猫でした ●おみやげをもらえない猫でした
笑っている人の傍にいるのが好きな猫でした ●夢らしい夢を持たない猫でした
しゃべりすぎた夜はいつも眠れない猫でした ●みんなと一緒に帰れない猫でした
いくら耳を澄ましても聞こえない声がある ●別れ際はいつも泣きたい猫でした 
自分が思っているよりずっと弱い猫でした ●生きていることが大好きな猫でした 
秋の夕暮れ時、商店街をとぼとぼと ●うまく自分のことが喋れない猫でした 
誰のことも嫌いになれない猫でした ●生まれた街を好きになれない猫でした 

※翼を捨てたい猫の物語'05リミックス版は『アコナイトレコード年忘れ大忘年会』において配
  布されたパンフレットに「おまけ」として強引につけられたものであり、今回
  作者の気分により特別に公開に至った。
  
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2005年09月27日

《翼を捨てたい猫の物語'05》たとえ真夏の真ん中に立ちすくんだとしても

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――さようなら。またあう日まで

いつしか翼のある猫は、笑いながらそう言えるようになっていました。
いくつもの辛い別れを、身を切るような悲しみを、たくさん。それこそ
たくさん経験して。そう言えるようになりました。笑いながら。

さようなら。またあう日まで

出会いは、いつも別れを含んでいて、それはどんなものにしろ本当は、
とても苦しいものだけど、きっと泣いてはいけないような気がするよ
うになったのです。むしろ――。

 ★★★

そんな別れをしないためにも。ひとつひとつの出会いを一緒に過ごせる
一瞬を大事にするんじゃないだろうか?
そう思うようになりました。

バナナフィッシュ岬へ向うバスは、どこまでも海に沿って走ってゆきま
す。悲しも喜びも、みなこぼすことなくのせて走るこのバスは、永遠に
夏の夢を写しつづけます。波は穏やかかで黒潮はどこまでも澄み、古い
遺跡のようなテトラポットを、波が洗っているのです。

そうして一つの出会いは、無数の出会いを広げて行くのです。

――君がこれから手にするのは夢なんかじゃないよ

ロシアンブルー種の店長が言いました。それは可能性そのもので、息が
詰まるぐらいの希望そのものなんだ。ゲップがでるくらいね


                     ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
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2005年09月25日

《翼を捨てたい猫の物語'05》バナナフィッシュ岬・見聞録

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――たぶんきっと誰もが、本当に自分以外の者を理解することなんてで
  きないんだ。

夏の汗ばんだ思いでは少し切なく、夏草は思い出のように流れすぎては
消えてゆきます。たとえ帰る場所がなくても、僕らは一箇所にとどまる
ことを許されなくて。そして気がつけばやはり泣いてばかりいて、そん
な風に泣きながら、たくさんの大事なものを、大好きだったものと、決
別してゆくのでしょう。

 ★★★

きっと生まれた意味などなくて、それはたぶん自分で作るもので。

 ★★★

たとえこの季節が遠い過去のものになってしまっても。僕は君と過ごし
た輝いた一瞬一瞬を絶対に忘れはしないだろう。君は……―2月の兎は、
翼のある猫の肩に頭を寄せて、小さな寝息をたてています。

『――ねえ………今よりずっとずっと遠いところへいきたいわ。』

アルバイトを辞める時、ロシアンブルー種の店長がいいました。

強くなりなさい。タフに。打たれ強く。嫉み、嫉妬、ひがみ、やっかみ
冷笑、軽蔑、そんなあらゆる悪意から、ひとつでも多く、君が大事にし
ているものや、大切に思っている誰かをしっかりと守れるように。


そして誰もが誰かを本当に理解できないとしても、大きく包みこむよう
なそんな気持ちをしっかりと抱きしめて。


                           ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
 
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2005年09月11日

《翼を捨てたい猫の物語'05》いくら耳を澄ましても聞こえない声がある

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――いくら耳をすましても、聞こえない声がある。

《喜八》の手紙はこう締めくくられていました。翼のある猫はすこし貯
金もできて、ようやく落ち着いた頃でした。生きているだけでお金がか
かります。そして《喜八》は、また悩んでいました。

決して諦めているわけでもないんだ。投げ出しているわけでも、諦観し
ているわけでも、冷めているわけでもない。ね。わかるだろ?何かやり
たいんだ。無性に駆け出したいんだ。でもどこにいっていいのか?何を
やっていいのか全く分からない。そういう辛さってわかるかい?


 ★★★

翼のある猫は、家を出た猫です。自分でやらなければ、誰も何もしてく
れない
ことは、慣れるまではしんどいことでしたが、そこには何モノに
も変え難い自由と、充実感がありました。辛い別れを繰り返すたびに、
泣いて。次の出会いを大切にしようと心に誓い、そしてその分、言葉に
できない何かを大事に背負ってきました。
その一つ一つが、家にいては
学校にいては得られないもので、自分が一番求めているものでした。

 ★★★

フロアを任された翼のある猫は、アルバイトのシフト表を作りながら、
ぼんやり考えていました。

――喜八。『割に合うか割に合わないか』考えてるうちは、一歩も前に
  進めないんだよ。


                           ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
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2005年09月03日

《翼を捨てたい猫の物語'05》生きていることが大好きな猫でした

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――猫は「思いやり」と「やさしさ」があればすべてうまくいくから。

喜八」からの手紙――。アルバイトの休憩時間に、翼のある猫は新宿
公園のベンチに座って、開きました。喜八は翼のある猫と別れてから、
自分の生まれ育った街を出たのでした。彼女とひどい別れ方をしたので、
街にいられなくなったのです


『変わった………』翼のある猫は手紙を見て思いました。喜八は変わり
ました。確かに。

 ★★★

嫌なこともあるさ。もちろん、糞みたいな奴らばかり幅をきかせている。
テメエのことしか考えてなくて、他人の痛みに無関心な奴とかね。そう
いう想像力のない連中と折り合いをつけてきゃなきゃならないのもまた、
人生だ。しんどいね。まったく。

猫は生まれた時から一人ぼっちなんだ。そんな気がして。生きていくっ
ことは多分、すべてを愛おしく思うことだよ。誰かがいってた。

――考えるのは自分だ。でも自分を変えてくれるのは、自分じゃない

そして僕らは《愛》なしでは何もできない。《愛》がなくては何一つ

 ★★★

時間です。翼のある猫はエプロンのポケットに手紙をしまい。新宿西口
にあるお店へ向いました。がんばらなくちゃ。僕一人じゃない。


                           ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
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2005年09月02日

《翼を捨てたい猫の物語'05》 自分が思っているよりずっと弱い猫でした

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――毒猫のミイは、ひとりぼっちの猫でした

いつしか言葉をなくした猫でした。誰かを傷つけることに臆病になって
いる猫でした。だからいつも、みんなから離れたところにいて、なるべ
く誰とも触れ合わないようにしていました。

 ★★★

できることなら、誰も傷つけないで生きたいわ。いつだってそう思ってる。

《2月の兎》が、上がり作業のチェックをしながら、翼のある猫に呟きま
した。もちろんその猫を呪うこともある。でもアタシは……自分が思って
いるよりも、ずっとずっと弱い猫なのよ。

すがりついて泣くならば、それはそれで簡単なことだけど、それをやった
瞬間、何かが崩れ落ちてしまうようなきがして。結局、自分を責めること
しかできなくて
、どうして………どうしてこんなにさみしいんだろうって
……。ねえ。でも、これだけは覚えておいて。

アタシがあなたを誘ったのは、決して寂しかったからじゃないからね

 ★★★

毒猫ミイが首都を離れ、田舎に帰った日。翼のある猫は一人、長距離バスの
ターミナルまで、見送りに来ました。そしてさっき二人で歩いて来た道の
りを今度は一人で歩いて帰りました。さびしさに耐えながら、どうして、
僕は彼女との出会いをもっと大切にしなかったのだろう?
と過ごせなかっ
た時間を後悔して、《2月の兎》の言葉を思い出しました。

――誰かが自分を見てくれるってことはとてもラッキーなことなのよ。




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2005年08月29日

翼を捨てたい猫の物語'05》秋の夕暮れ時、商店街をとぼとぼと。

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――翼のある猫は、単純な猫でした。

相手が嬉しいと自分もたまらなく嬉しくて、相手が退屈そうにしている
と、どうしていいのかわからず、おろおろするばかりの猫でした。そし
て、どうしようもないぐらい猫が好きなのでした。たとえ冷たい言葉で
嫌なことを言われても、やはりどうしても嫌いにはなれませんでした。

 ★★★

毒猫ミイ》は、ひとりぼっちが、心にしみついた猫でした。そしていつ
からか、ひとりぼっちがどういうことかすら分からなくなっていました。
《毒猫ミイ》は、自分が毒猫と思いこんでいるので、いつも誰かを傷つけ
てしまわないように。そればかり気にしているのでした。

いつも誰かを傷つけてしまわないかと、そればかり気にしていました

毒猫ミイは、みんなが来る前に教室の一番目立たない隅の席に座り、みん
なが帰ってしまってから、誰とも顔を合わせないように帰るのでした。
そして、そんな毒猫ミイを気にとめる猫は1匹もいませんでした。

 ★★★

下宿先へと向う帰り道。翼のある猫はぼんやり考えました。『きっと、
いつも友達に囲まれている猫には、一人ぼっちの猫の気持ちなんてわか
らないんだうな………。さびしいって一番辛い気持ちなのに
。』

秋の夕暮れに、長い影が、商店街の看板に映っては消えて――。


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《翼を捨てたい猫の物語'05》しゃべりすぎた夜はいつも眠れない猫でした

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――翼を捨てたい猫は、おしゃべりが大好きな猫でした。

でも相手の気持ちに敏感な猫だったので、相手がつまらなそうにしてる
と、とても悲しくなりました。
申し訳ない気持ちでいっぱいでした。そ
していつも何も言えなくなってしまいました。

 ★★★

翼を捨てたい猫は、本当はおしゃべりな猫でした。小さい頃は人なつっ
こくて、誰にでもついていってしまうような子猫でした。

――でも、いつしか無口な猫になってしまっていました

本当は明るくて人懐っこい子猫は、もうどこにもいませんでした。どうし
てそうなってしまったのだろう?翼のある猫は時々そう考えました。
も答えはいつも見つからなくて――。
大きくなるにつれて、色んな大人
が次々やってきて、まるで服を着替えさせるように翼のある猫を別なも
のに変えていきました。

 ★★★

もしそれが本当なら、あなたは自分をとりもどさなきゃいけないわ

在庫チェックをしていた《2月の兎》は、真面目な顔でそう言いました。
急がなきゃ間に合わない。すべてが思い出になる前に。ねえ……。

 傷つくのを恐れてたら、相手の心なんか永久に触れられないわよ


                           ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
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2005年08月27日

《翼を捨てたい猫の物語'05》カマンベール・かにかまを作りつつ思いました


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――働くことを知らなかったとき、大人はただの大人でした

自分が働くようになってから、翼のある猫は働くことがどんなことか、
お金を稼ぐということはどんなことか、家族を背負うということがど
んなに重いものか、どんなに辛く自分を削ることか、身をもってしり
ました。そして、どんな職場でも、

誰もが自分の愛するものを背負い、今日を潔く生きているのです

ときどき、翼のある猫は、いつまでもバス停に立ってこっちを眺め、
手を振って見送る家族を思い出して泣きました。そう、涙がとめど
なくながれました。いったい、

――家族がいて、そんな毎日を過ごすこと以上に幸せなことなど、
  あるのでしょうか?


家族を背負い、今日も辛い仕事現場にやってくる同僚のおじさんたち
の顔は一様にみなつかれていて、格好までくたびれてて、でも、翼の
ある猫にはそれが眩しく、またそれが父親の顔なんだなと思いました。

 ★★★

――翼のある猫は友達のいない猫でした。

正直に言えば友達とはなにか、本当はわからないのでした。同僚も、
仲間も、とても気持ちのいいものです。でも友達とは違います。やは
り仲間です。友達と仲間は違うのかな?「カマンベール・かにかま」
製造装置を動かしながら、翼のある猫はふと思いました



                    ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版


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2005年08月19日

《翼を捨てたい猫の物語'05》別れ際はいつも泣きたい猫でした

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――翼のある猫は、いつも見送る側の猫でした。

じゃあね。と友達が去っていきます。また会えることなんて誰もわから
ないのに。「またね」と友達が笑って。きっと僕らはそんな時間の中に
いて、そんな風にしか生きられなくて。たとえ今日が、一生の別れでも、
また明日会えるかのように、手を振って別れるのでしょう。

別れ際はいつも泣きたいほど悲しくなって

猫と猫が分かり合えるなんて、同じ気持ちになれるなんて、ありえない
と思っていた自分が、すこしだけ前向きになっている。ありがとう。ま
た明日。会えなくても、また明日――

 ★★★

強くならなくちゃ。自分の意見を言えるぐらいに。自分を諦めてしまわ
ないように。愛すべき人たちが、すこしでも惨めな思いをしないように、
すこしでも守ってあげられるように。そして自分を歪めてしまわないよ
うに、自分に同情しないように。そんな風に、成長のコマをひとつ。自
信をもって、ひとつ。前に進めていくんだ。たとえひとりぼっちになっ
たとしても、それなら僕は平気だ。

――大事なものは、誰も与えてくれないのよ。当たり前じゃない。

じゃあ、どうするの?「2月の兎」は翼のある猫の耳を軽く噛んで意味
ありげに笑いました。アルバイトの、更衣室で、ふたり。

――勝ち取るのよ。だから大事なものなのよ


                     ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版

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2005年08月16日

《翼を捨てたい猫の物語'05》夢らしい夢を持たない猫でした

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――なあ、夢がなきゃダメなのかな?

総武線の黄色い列車が、頭の上を通りすぎていきます。年末――。僕と
バイトの先輩の《小林くん》は、言葉少なげに、ガード下をくぐります。

 ★★★

『お前は口下手だから、黙って俺のいうことに頷いていればいい。』

小林くんは、俺が合コンの手本を見せてやると。俺にまかせといてくれ。
と、とても張りきっていましたが、いざテーブルで、彼女たちが、それ
ぞれの将来の夢を、リアルな現実を話したとき――。小林君には夢らし
い夢がなくて。その場がしらーっとなってしまいました


なあ、夢がなきゃダメなのかな。夢がなきゃカッコ悪いのかな?

しょんぼりと小林くんが言いました。翼のある猫は何も言えませんでした。
ただ、その時、御茶ノ水の駅のホームで快速列車を待ちながら思いました。

 ★★★

――僕は、夢がなくても、小林くんのことが好きだけどな。

例え誰のことも責められない物語でも、結末だけはリアルな痛みで、泣く
ことが負けならば、僕はその人の存在を限りなく愛するだろう
。翼のある
猫はそう思い、星のない、首都の空を見上げました。

あそこに『オリオン』があるはずだ――。

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2005年08月11日

《翼を捨てたい猫の物語'05》うまく自分のことが喋れない猫でした

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――翼のある猫は、うまく自分のことがしゃべれない猫でした。

がんばってしゃべろうとするほど、がんばってしゃべった時ほど、あと
で一人になった時に、憂鬱になるのでした
。うまく。喋れない。だから
翼のある猫は、しゃべることを諦めていました。ただ丁寧に、相手の話
題に耳を傾けていました。でも――。

言葉がいけないんだ。言葉がすべてをダメにしちまったんだ。』

と同僚の《山内》さんが言った時、分からなくなってしまいました。

★★★

僕は猫のいったいどこを見ているのだろう?簡単にその猫を決めつけて
いないだろうか?本当は何もわかっちゃいないのに。心のどの部分も見
ちゃいないのに勝手に、そう思って。たくさん大事なことを台無しにし
てきちゃったんじゃないだろうか………。

乃木坂へ向うバスの中で、バイト仲間の《サクラ》が言いました。

  もう少しアタシが利口になれば、色んなことがわかるのかな?
  もう少ししアタシが利口だったら、誰も傷つけずに済んだのかな?


翼のある猫は《サクラ》の手をそっと握りしめ、じっと涙で潤む瞳を見
つめながら、ゆっくりと首を振って、悲しく笑いかけました。


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《翼を捨てたい猫の物語'05》毎朝、上り列車を眩しそうに眺める猫でした

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――翼のある猫は、自分の街が好きになれない猫でした。

そして、学校も、もう楽しいところではありませんでした。淡々と時間
だけが過ぎていきます。何も変わりません。そんな毎日の繰り返しの中
で、朝見かける、反対側ホームに止まっている、首都行きの上り列車を
眩しげに眺めるのでした。

翼のある猫は学校にいかなくなりました

郊外にある古墳にいったり、灯台の下で釣りをしたり、知らない町に行
って、一日歩きつづけたりしていました。お父さんとお母さんは何も言
いませんでした。担任の先生が来ても、翼のある猫には何も言いません
でした。

 ★★★

父さん。僕はわからないんだ。学校にいく意味も、今自分がやってるこ
とが正しいのか、正しくなのもかも
。お父さんは、パイプに火をつけ、
しばらく黙っていました。

いや、お前は分かってるはずだ。しがらみをたち切れずいることも。そ
して、学校やこの街に答えがないことも、いまやるべきことも。

たくさんの猫に出会い。たくさんの猫の人生に触れなさい。悲しみや
 孤独にもだえ、その分《強いやさしさ》を身につけなさい。今街を出
 ることに、お父さんは反対しないよ。



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2005年08月10日

《翼を捨てたい猫の物語'05》笑っている人の傍にいるのが好きな猫でした

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――翼のある猫は、笑っている人の傍にいるのが好きな猫でした。

楽しそうのな人の傍にいるだけで幸せな気持ちになることができました。
それだけでいいのです。それだけで十分幸福な、翼のある猫なのでした。
ですので、翼のある猫は、いつも「どうやったら相手が楽しい気持ちに
なるのだろう
」とそんなことばかり考えていました。

自分が笑うことより、相手を喜ばせるのが大好きな猫でした

★★★

翼のある猫は、だんだん学校にいる意味がわからなくなってきました。
勉強が難しくなると、みんな誰もかまってくれなくなりました。『みん
な忙しいんだな』と翼のある猫は思いました。

翼のある猫はだんだん学校が嫌いになっていきました。

ある夕餉。お父さんは言いました。「それじゃお前の《心》がもたない
だろう。それじゃ、お前の《本心》があまりにもみじめじゃないか
。」と…。

翼のある猫は、胸が熱くなってがまんできなくて、顔を真っ赤にして泣き
ながらみんなに好かれるより、嫌われることが怖いこと。それで、ウソを
言ってしまう自分が嫌いなこと。学校にいる意味がわからないこと。を正
直に言いました。そしてそんなお父さんは、やさしく笑いかけるのです。

お父さんやお母さんはお前を嫌いにならないよ。例えお前がどんなに間違
っていたとしても。ね。それに………。

――《逃げてる》とか《逃げてない》とかは、周りじゃなくて自分が決めることさ


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2005年08月08日

《翼を捨てたい猫の物語'05》誰のことも嫌いになれない猫でした

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――翼のあるねこは誰も嫌いになれない猫でした。

同じスーパーの生鮮コーナーの《高柳くん》は、みんなに好かれていな
くて、どちらかと言えばバカにされている猫でしたが。翼のある猫は、
嫌いでも、好きでもありませんでした。でもからかい半分でも《高柳く
ん》は、翼のある猫を無視しないので、陰で《高柳くん》の悪口を言う
猫よりは、好きかな
と思いました。

アルバイトの帰り道。季節は夏で、開け放した窓からは、それぞれの家
庭の夕餉の風景が見えました翼のある猫は、ちょっと切ない気持ちにな
り、駆け足で家に帰りました。

★★★

《高柳くん》は、翼のある猫にだけそっと教えてくれました。

――みんなが俺を嫌ってること、バカにしてることなんか、はじめから
  知ってるよ。
(笑)。

でもいいんだ。俺も変われないし。みんなも変われないだろうし。しょう
がないんだ。これは………しょうがないことなんだ。それに………。

俺、嫌われることに慣れてるからさ

その夜、その言葉の悲しさに。翼のある猫はなかなか眠れませんでした。

                
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2005年08月07日

《翼を捨てたい猫の物語'05》みんなと一緒に帰れない猫でした

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――翼のある猫は、みんなと一緒に帰れない猫でした。

どこかでみんなに会ってしまうと、きまづい思いをするので、なるべく
急いで帰ったり、時間をずらして遅く帰ったり、駅まで遠回りして、帰
ったりしていました。それでも不意に街角でみんなに会ってしまう時も
あって、そんな時は、真っ赤な顔をして、うつむいて、早足でその場を
逃げるように後にしました。何を話していいのかわらかなくなってしま
うのです。
ですので、

どうしても、みんなに「話しかける」ことができない猫でした

みんなじゃなければ話しかけられるんだけどなぁ。と翼のある猫は時々
思いました。向こうが一匹や二匹だったら「こんにちわ」って言えるの
に………。言葉は、いつも言えなくて、ポケットに入れっぱなしで、ボ
ロボロになって刷り切れて、そうしていつのまにか消えているのでした


 ★★★

――翼のある猫は、授業中手を上げられない猫でした。

前の席のぶち猫の田中くんが、何回も手を上げて発言するのを、いつも
「すごいな」と思っていました。本当は、翼のある猫も「答え」を知っ
てはいるのですが。どうしても手を上げることはできませんでした
どうしても、できませんでした。誰の邪魔もしたくなかったのです。

                

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2005年08月06日

《翼を捨てたい猫の物語'05》生まれた街を好きになれない猫でした

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――翼のある猫は生まれた街を好きになれない猫でした

大好きなものもたくさんあるけど、嫌なこともまたたくさん経験してき
た街でした。早く大きくなって、街を出ることばかり考えていました。
家族と離れることは悲しいことだけど、それよりも、知らない街がたく
さんあって、その街を想像すること
は、魅力的な作業でした。

いつも、「誰かに謝りたいような」そんな気持ちを抱えていました。眠
れない真夜中は「ごめんなさい」と何度も呟いて泣きました。そして時
々、それはきっと、自分に言っているのかもしれないと、ふと思ったり
もしました。

 ★★★

――翼のある猫は、本当は、勉強が好きな猫でした。

学校の勉強が好きでした。教科書を見るのが好きでした。他の猫よりと
てもノロマだったけど、新しいことを知るということは、やはり楽しい
ことでした。

でも、クラスのみんなは勉強が嫌いでしたから、翼のある猫も、そうい
うことにしていました。だから、翼のある猫は、学校が嫌いな猫でした。

春の宵に雲が流れて往きます。『今辛いのは、間違っていないから』と、
《あなた》は言うけど、この辛さに途方に暮れるばかりで「強くならな
くちゃ
」と翼のある猫はそっとヒゲを震わせました。

          
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2005年08月04日

《翼を捨てたい猫の物語'05》おみやげをもらえない猫でした

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――翼のある猫は「おみやげ」を配ってもらえない猫でした。

ある時、翼のある猫は放課後、近所のスーパーでアルバイトをしていま
した。家計が厳しいので、学校が許可してくれたのです。そして、翼の
ある猫は、誰かが旅行や出張にいって、「おみやげ」が置いてあっても、
絶対に、自分からは手をつけられない猫でした。

「食べなよ」といってくれる猫はいませんでした。

食べてない猫を探して「食べて」と、わざわざ勧める猫は一匹もいませ
んでした。だから翼のある猫は、いつも「おみやげ」があっても見ない
ふりを、誰かが配っていても、聞こえないふりを
していました。

それでも、翼のある猫は、この仕事も職場も同僚も大好きでした。

 ★★★

かんばれば、クラスのみんなから嫌われてしまいます。

翼のある猫はがんばってはいけない猫でした。だからいつもテストで悪
い点数をわざととっていました。ただ――。それをお母さんに見せる時
だけは、本当に、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。

大丈夫。自分ががんばったって思えればそれでいいのよ。

とお母さんが笑った夜。翼のある猫は、枕に顔を押し付けて、涙を搾り
出すようにして大声で泣きました。


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《翼を捨てたい猫の物語'05》日記をつけない猫なのです

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とある場所とある番地とある丁目に「翼のある猫」がいました。

「がんばる」のが好きな猫でした。でもがんばるほど、みんなに嫌われ
てしまうので、テストなんてみんな30点です。でもそれで嫌われずに
すむのならば、それでいいと思っています。

ただそれを両親に言うことはしませんでした。言わないほがいいと思っ
たのです。言うと、きっとふたりとも悲しむだろうと考えました。だか
らずっと家でははだまっていました。バカのふりをしていたのです。

 ★★★

なにより翼のある猫は《友達》が好きな猫なのでした。

 ★★★

ですので、なるべく飛ばないようにしています。翼のある猫が飛ぶと、
みな、翼のある猫に冷たい態度をとるようになるので飛ばないのです。
はっきり言ってしまえば、翼なんていらないのです。こんなものがある
ために、嫌な思いばかりしてきました。

だから翼のある猫は日記をつけない猫でした。

後で読んだ時、よけい惨めな気持ちになるが嫌で、いつしかやめてしま
いました。翼のある猫はそんな風に、毎日をいっしょうけんめい暮して
います。

あなたがバスを待っている時も、コンビニで立ち読みしているときも、
授業中、恋人にメールをしているときも、そんな風に。

毎日を、一日一日を、だたいっしょうけんめい暮しているのです。


                       ■翼を捨てたい猫の物語 05リミックス版
posted by イロ室長 at 02:35| Comment(0) | TrackBack(0) | 土曜カメD翼ヲ捨テタイ猫 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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